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社長さんに聞いて欲しい補助金の怖いお話

最近では事業者支援のためのさまざまな補助制度が経産省から打ち出されており「うちも取りたい!」あるいは「取らなきゃ損!」と考えておられる方もあるかと思います。

少し長くなりますが、商工会議所の経営指導員として各種補助金申請に関わった身から、地域の事業者さんに聞いて欲しいリアルなお話をさせてください。

⚠️本当に必要ですか?その補助金

補助金で陥りがちな誤りとして、「補助金をとること」が目的になっているケースがあります。

本来、業績を向上させる何かしらの取り組みを行うための資金調達手段であるはずの補助金ですが、何も取り組む予定がないのに補助金を取りに行く社長さん。これが非常に多いです。

社長「補助金とりたいねん!」
支援機関「とって何をされるんですか?」
社長「せやな〜何したらええかな?考えてよ」

というナンセンスなやりとりが支援の現場では当たり前におきているのです。手段と目的が逆転しているんですね。

さて、手段と目的が逆転して補助金ありきで事業展開を考えていくとどんな問題があるのでしょうか。

⚠️得して損とる「補助金とりの銭失い」

一般に補助金の形式として補助率1/2、2/3、3/4というものがあります。そのままの意味で、補助金事業で支出する経費の何分の何という割合を補助しますよという意味です。

これの意味するポイントは【⚠️自腹が発生しますよ】ということです。全額補助というケースも中にはありますが、実際には稀です。

つまり、必要もないのに補助金を取って何かしらの経費で使っても、実際の事業にプラスの効果がなかったら単純にお金を失うだけなのです。恐ろしい話ですよね。

仮に社長さんが何かしらの事業アイデアを持っていても、収益につながらない、事業性のないものであれば結局同じ事です。

もっというと、生産機械など大きな設備投資をする場合にはより注意が必要です。

受注がなく見込み通りに稼働しない際にはメンテなど支出だけがかさみ、大事なスペースを奪うことになるため負の遺産となります。
(補助金で取得した資産には処分に制限があるため売却も容易ではありません)

⚠️補助金は後が大変!採択後からがスタート

それだけではありません。補助金申請には事業計画書作成などかなりの手間ひまがかかります。

中小・小規模事業者の場合、そこはまさに社長さんやある程度の役職者が受け持つ業務になります。(経営判断に関わるものなので事務員さん任せではできません)

規模の小さい会社における社長さんの役割は非常に大きいものがあります。売上における貢献度も大きいでしょう。そんな大事な社長さんの時間を割く価値があるのか?一度立ち止まって考える必要があります。

補助金の場合、大変なのは申請前より採択後の報告書作成だったりします。間違いがあるとお金がもらえない上に、行政に出す書類は非常に細かく難解です。慣れない方は事務局に何度も問い合わせながら書類を完成させることになります。

補助金申請をお考えの方は、ここまでをセットで見込んでおく必要があります。補助金の採択はゴールではなくスタートなのです。

この辺りの作業の手間や難易度は補助金額の大きさに比例するので、多額の補助金をとったはいいものの後から膨大な書類提出に追われ後悔される方は少なくありません。

逆に、補助金額が小額であれば余計に費用対効果が問われるところです。排水溝に落とした10円玉を1時間かけて取り出す価値があるか?という感じです。(いや、お金は大事ですね😅)

⚠️コンサル任せなら大丈夫?

一方で、申請が大変ならコンサルに丸投げしたらええやん!と思う方もあるでしょう。もちろんそれも方法の一つです。その場合、手間は少なくなるかもしれませんが、彼らに支払う着手金、報酬分だけ実際に得られるお金も少なくなるわけです。

要は自腹で出す金額が増えるということなので、前述の通りその後の効果が見込めないなら無駄金が出ていくだけなのです。

⚠️補助金倒産に注意!

これはコロナ禍で補助制度が相次いで打ち出されている中での問題ですが、採択を受けて補助事業を実施し、補助金を請求してからの入金がおくれているケースが発生しています。(知る限りで数ヶ月の遅れが生じているケースもあります)

多くの補助金は「立て替え払い」の事後精算です。つまり、そもそも経費を支出するための資金調達の見込みがないと計画が破綻してしまうということです。

小額の投資ならまだしも、補助金をあてにして数千万円の投資を行なったものの入金の遅れで資金繰りが悪化し、事業が立ち行かなくなるというようなリスクも現実にあるのです。

そのために事業融資を受けることになるのも本末転倒な話です。

長々と書きましたが、補助金は本来、企業の業績向上を応援するためのもので、決してそれ自体が悪いものではありません。

ただし、申請する方の考え方次第ではとんでもない劇薬にもなりうることを知っていただきたいのです。

実際に、補助金をうまく新事業に充てて業績を大きく伸ばした方もたくさんいますし、逆に補助金を獲得できたはいいものの、その後の売上アップにつながらず無駄な支出になっただけの会社もあります。

結論としては、補助金の申請をお考えの際は、一度立ち止まって以下の3つの点を確認していただければと思います。

①補助金を受けて実施する事業や投資は会社の業績アップに本当につながるか(事業性の確認)

②補助金申請にかかるコスト(費用・労力)は割に合うか(費用対効果の確認)

③キャッシュフローは問題ないか(補助金なしでも進められる計画になっているか、資金計画の確認)

このコロナ禍では多くの企業が苦境にあり、わらにすがる思いで補助金を頼りにされる方もあると思います。

そうした事業者さんほど、目先のお金にとらわれずに慎重な判断をしていただきたいと思います。

自分で判断がしにくい場合は地域の商工会・商工会議所や契約している税理士さん、経営者仲間に相談してみてください。

この投稿から少しでも補助金で失敗する事業者の方が減ることを願います🙏